はじめに 〜パンラボ池田浩明の連載コラム「中くらいのお世話」〜

グロワールさんにはお世話になりまくっている。ご恩返しをなんとかしたいと思うが、私のできることはなんだろう? グロワールさんにはもっともっと繁盛してほしいといつも思っている。そこで、いろんなところでパンを食べまくってきた経験を活かし、全力でアドバイスするのはどうだろう。不定期で、こうやったらグロワールさんがもっと儲かるんじゃないかと提言する。あいうえお順に【あ】からはじまる言葉、【い】からはじまる言葉…というふうに毎回お題を決めて。大きなお世話だと自覚はしている。でも、50音=50個も提言するのだから1個ぐらい役に立つ物もあるかもしれない。そんな願いを込め「中くらいのお世話」というタイトルにした。もちろん、グロワールさんだけではなく、パンが好きな人にも読んでもらえたらうれしい。これはひとりのパンおたくが、みなさまになりかわって、こんなパン屋があったらいいなという夢をつづるものだ。

【あ】アソート[2016/6/20]

グロワールのアソートに出会ったのは陸前高田である。私は「希望のりんご」という東日本大震災の被災地・陸前高田を応援する活動を行っている。ある日、グロワールさんが突然連絡をくれて、小さな避難所が解散する記念のパーティにパンを提供してくれることになった。そのとき送ってくれたのが「アソート」だ。袋の中に、メロンパンとかクロワッサンとかバターロールとかのミニチュアが5、6個入っている。みなさんおおよろこびだった。なんたって愛情たっぷりである。小さいけれどあんなにきちんとしたパンを1個1個作るのは本当にたいへんだと思う。働き者の一楽虎光シェフならではの仕事だ。このホームページで予約販売(30人分以上限定とか)したらすごくいいと思う。たとえば、幼稚園の卒園式の謝恩会のおみやげとか。子供たちのよろこぶ顔が目に浮かぶようだけれど…。

グロワールのアソート

【い】イベント[2016/6/27]

イベントで注目を集めて集客を伸ばすのは、ビジネス書の定番ネタである。グロワールにやってほしいイベントは? と考えてすぐ思いついたのは、ホットドッグ大会。ソーセージをあたためておいて、注文を受けてから、焼きたてのドッグパンにマスタードを塗ってはさみ、「はいよ!」と渡す。ワゴンを出して店の前でやってほしい。ビールサーバーも用意して、ビールもいっしょに飲めたらいいな。夏の夜なんか最高だと思う。夏祭りとか花火大会とかのときならもっとうってつけだ。そのとき私(さいたま市在住)は大阪まで行けるんだろうか? 行くことができず、「こんなに盛り上がりました〜」なんてグロワールさんのツイートを見たら、すごく悔しいだろう。そうなのだ。イベントにきた人はもちろん、行けなかった人にも「グロワールって楽しい店なんだな」って思ってもらえるはずである。

グロワールのパン作り

【う】ウスターソース[2016/7/4]

先日、東京・日暮里にあるワインバー「セッキー」で、「卵3個で作る卵サンド」を食べた。注文してから卵を3個割って、オムレツを作る。同時進行で、グリルで食パンを焼く。焼きあがったところにバターを塗り、さらにウスターソースを塗る。火の入ったパンの熱でウスターソースがあたたまり、あのなつかしい香りが立ち上がる。お好み焼屋のあのひどく食欲をそそられる匂いと同じものだ。そこに卵が舌の上でどろっと甘く溶ける。理由もわからないが卵とソースはひどくシンクロするのだ。関西の方ならご存知かもしれないが、京都にあった伝説の店コロナの卵サンドにこの組み合わせは範をとっている。ウスターソースなんてありふれたものだけど、あの香りの力はすごい。パン屋さんのサンドイッチはマヨネーズ味が多いと思うけど、ウスターソースはこれからきそうだなと思っている。

【え】縁結び[2016/7/11]

浅草を歩いているとき、神社の前を通りかかった。境内にうら若き女子たちが集っている。なにごとかと覗いてみると、縁結びのパワースポットだそうで良縁を求める人が押しかけているのだ。みんなご利益が好きである。霊験あらたかなパンがあれば売れるにちがいない。そこでプレッツェルである。紐を結んだような形をしている。あれを「縁結び」という名前で売れないかと思った。奇妙奇天烈な形だとずっと思っていたけれど、最近すごさがわかった。紐状に伸ばしてくるっと結ぶ。パン屋さんにとっては作業性が意外といいのだろう。そして細いところから太いところまで、いろんな太さがある。だから、細いところはかりかり、太いところはしっとりして、ぜんぶ食感がちがって飽きない。岩塩がかかっているので『塩パンブーム』にものっかれる。大阪の縁結びで有名な神社とコラボで売り出すのがいいと思う。

プレッツェル

【お】大阪名物[2016/7/18]

「大阪名物」と堂々胸を張って言えるパンがあったら、インターネットで売りやすいのではないかと思う。それってどんなものか考えてみよう。大阪には喫茶店でトーストを食べる文化がある。オセロの松嶋さんは、実家が朝ごはんを作らない習慣で、毎日喫茶店でトーストを食べていたそうだ。東京はマック(大阪ではマクドというんでしたっけ)やスタバばかりで、モーニングセット自体なかなかお目にかからないが、大阪では健在。モーニングといえば、厚切りのトーストだ。大阪のスーパーやコンビニでは4枚切りというぶ厚い食パンが売られているけど、東京にはない大阪ならではのもの。そして、大阪・神戸のパン屋をまわって思うのは、食パンのレベルが高いということ。グロワールも然り。食パンがいちばんの売れ筋で5種類も売っている。厚切りの好きな大阪の人が考えた厚切り専用食パンというのはどうだろう。

パン屋のグロワール「食パン棚」

【か】関西名物[2016/7/25]

大阪名物・厚切り専用食パンを売り出したらどうか、と前回思いつきで書いたが、具体論はノーアイデアである。上半身裸の島木譲二に「大阪名物、厚切り専用食パンや!」と叫んでもらえば売れるかもしれないが、ブッキングするお金はない。…もっと地道に考えていこう。イメージ的には冷凍うどん。冷凍庫に常備していつでも食べられるけど味は本格派、というあの感じ。1スライスずつ個包装された食パンをオーブントースターに入れるだけ。切れてるバターも同梱されていて、それをのっければ、とろーりあつあつ大阪の喫茶店で出てくる4枚切りトーストがご家庭で! でも4枚切りの食パンを冷凍して、中まで火が通るのか、という問題がある。そこで『食パンの魔法』。はじめから切り込みを入れておく。そうすれば火通りもいいし、中にバターが滲みこんで、より喫茶店のトーストっぽくなるだろう。

グロワールのプレミアム食パン

【き】緊急実験[2016/10/13]

サンドイッチをめぐって男だらけ(&マダムひとり)の緊急実験が開催されたのでご報告しておく。パネリストはグロワール店長・虎光氏、グロワールマダム・千賀氏、パンヲカタル・浅香正和氏、PAINLOT・山田慎氏、そして私。テーブルに並べられたさまざまな具材とパンを駆使して、オリジナルサンドイッチをかわりばんこに提案しあう趣向だ。

べったら漬け+クリームチーズ+ブドウマスタード+グロワールプレミアム食パン(山田慎作)
べったら漬けとクリームチーズという発酵食品同士の思わぬ相性に瞠目。べったら漬けという和食材をパンに織り込むことに成功。

べったら漬け+クリームチーズ+ブドウマスタード+グロワール食パン(山田慎作)

紫キャベツ+カボチャ+焼豚+グロワールプレミアム食パン(浅香作)
焼豚とキャベツという鉄板の組み合わせに、ほっこりとした甘さのカボチャのペーストを加えて女子受け必至か。

紫キャベツ+カボチャ+焼豚+グロワール食パン(浅香作)

うりの刻み奈良漬け+さばのグリーンペッパー+タイム+クリームチーズ+グロワール金ゴマ食パン(千賀作)
奈良漬けとサバに相性を発見。さばの香りを活かすハーブのタイムもあしらうおしゃれな一品。

うりの刻み奈良漬け+さばのグリーンペッパー+タイム+クリームチーズ+グロワール金ゴマ食パン(千賀作)

奈良漬けの酒粕+チャーシュー+ぶどうマスタード+ブロッコリー+トマト+ZOPFバゲット(虎光作)
酒粕だけで十分にスプレッドになることを証明。さらに野菜もたっぷり入れてバランスよく。

奈良漬けの酒粕+チャーシュー+ぶどうマスタード+ブロッコリー+トマト+ZOPFバゲット(虎光作)

シンケンブルスト+キャロットラペ+マスタード+ZOPFバゲット(池田作)
「キャロットラペにはシンケンブルストがあいますよー」とメツゲライクスダにて提案されたことを丸呑み。あとはバゲットでシンプルに食べたい欲の産物。

シンケンブルスト+キャロットラペ+マスタード+ZOPFバゲット(池田作)

ベビーコーン+トマト+アスパラガス+パプリカ+紫キャベツ+スモークサーモン+ゴマドレ+からしマヨネーズ+クリームチーズ+グロワール発芽玄米食パン(千賀作)
いまはやりの「萌え断」(萌える断面の略)をいとも手早く作りあげるマダムの手技に一同喝采。彩りも鮮やかなレインボーサンドイッチ。

ベビーコーン+トマト+アスパラガス+パプリカ+紫キャベツ+スモークサーモン+ゴマドレ+からしマヨネーズ+クリームチーズ+グロワール発芽玄米食パン(千賀作)

キャロットラペ+焼豚+紫キャベツ+マヨネーズ+イタリアンパセリ+グーテのブロッチェンゴマ(浅香作)
キャロットラペと焼豚という鉄板の組み合わせ。さらにゴマと焼豚の風味も、中華料理を思わせる相性のよさ。

キャロットラペ+焼豚+紫キャベツ+マヨネーズ+イタリアンパセリ+グーテのブロッチェンゴマ(浅香作)

ザワークラウト+ブラートヴルスト+タイム+マヨネーズ+メンタイ蒸し鶏+グロワールプレミアム食パン(山田作)
題して「山田酸味スペシャル」。ドイツのオーソドックスなザワークラウトのソーセージの組み合わせに、さらに酸味や辛さを重ねて一工夫。

ザワークラウト+ブラートヴルスト+タイム+マヨネーズ+メンタイ蒸し鶏(山田作)

もも肉ハム+バター+ZOPFバゲット(池田作)
日本ではロースハム、ボンレスハムが主流も、フランスではハムといえばもも肉。もも肉のハムがあったのでフランスでよく売っているカスクルートを作ってみた。手を加える必要もなくおいしい組み合わせだと思う。

もも肉ハム+バター+ZOPFバゲット(池田作)

すいかの奈良漬け+べったら漬け+うりの奈良漬け+ZOPFヨーグルトライ(山田作)
漬け物とライ麦パンがすごく合う。まるでチーズと合わせているかのように。すごい発見だ!

トマト+パプリカ+クリームチーズ+イタリアンパセリ+ZOPFヨーグルトライ(池田作)
ニューヨークで食べたベーグルのイメージ。野菜とクリームチーズを混ぜたスプレッドを、プンパニッケルベーグルに塗った感じ。

トマト+パプリカ+クリームチーズ+イタリアンパセリ+ZOPFヨーグルトライ(池田作)

メロン+ぶどう+クリームチーズ+高級デニッシュ食パンのパン・ド・グロワール(千賀作)
あこがれのフルーツサンドをご家庭で。しかも贅沢にブリオッシュ食パンを使って。クリームチーズをマスカルポーネチーズに変えても極上であろう。

メロン+ぶどう+クリームチーズ+パングロワール(千賀作)

おのおのが大技小技を繰り出すバトルロワイヤルの様相を呈した狂乱の一夜だった。なんであんなに盛り上がっていたのか、いまも訝しい。

【く】クリームパン[2016/10/31]

「大人気!1日300個以上売れるクリームパン」みたいなのは数多い。クリームパンは日本人がいちばん好きなパンのひとつである。これは私の提唱する「中トロの法則」とも照応する。ゆで卵から、カレーパン、小龍包、たこ焼きに至るまで、行列を作ってまで食べたいと思うものは中からトロっと出てくるものが多いのである。さて、私もいままで大人気クリームパンを食べてきたがそこにはいくつかの必要条件があるように思う。1)クリーム多め。2)クリーム濃厚。3)クリーム硬めではなくとろとろ。4)皮が薄くて口溶けがいい。……つまりは「カスタード玉」がいいわけである。パンはあまり感じさせず、それはクリームを包む皮でしかなく、口の中に入ればカスタードが炸裂する。そんなイメージである。技術的な関門は多いであろうが、クリームをとにかく気前よく多めに入れるという前のめりなガッツを、一消費者としてはお願いしたいわけである。

グロワールのクリームパン

【け】結婚式[2016/11/16]

結婚式は、人生最大に財布の紐がゆるむときだ。100円や200円の出費などなんとも思わない。お金がかかればかかるほど「豪勢だ」と評価される。「結婚披露宴の引き出物パン承ります」というのはビジネスチャンスがないだろうか。結婚式ではみな縁起をかつぐ。「割れる」「切れる」という言葉を嫌う。「クープ」(フランスパンの上に入っている切れ込み)なんで入れるのはもってのほかだ。逆に割れないパンなんてどうだろうか。硬くて硬くて食べられないほどの…食べられないのはダメか。ちぎりパンはどうだろう。切れる割れるは御法度だとさっき触れたその舌の根も乾かぬうちにたいへん恐縮だが、「ちぎる」を「契る」に読み替える。2つの生地がくっついてひとつのパンとなるのだ。あえて別々の生地を組み合わせてマリアージュ(フランス語で結婚の意味)させるのはどうだろう。練乳クリームパンとイチゴを練り込んだパンとか。紅と白になっていればさらにおめでたさも増す。

結婚式

【こ】麹[2017/2/6]

木村家あんぱんの元になる酒種を知っているだろうか? お酒や甘酒の元になる麹菌を蒸したお米につけて培養される。酒種のよさとは、木村家あんぱんにもあるぷくっとした食感と、甘酒にも通じる和の香り、自然な甘さだろう。これが、あんことすごくよく合うのだ。酒種の自家培養はひじょうにむずかしい。それを行っている店は、銀座木村家と、鳥取のタルマーリーぐらいしか私は知らない。タルマーリーの「和食パン」という名の酒種のパンが好きだ。名前の通り、きんぴらごんぼうやら、しょうが焼きやら、和食と相性がいい。ちぎった生地におかずをのせてどんどん食べたくなる。酒種の生地はたいてい菓子パンに使われるけれど、食事パンにするのはいいアイデアだ。コッペパンの生地なんかにするととても向いているだろう。ホシノ天然酵母には麹っぽいフレーバーがある。特に、家庭でパンを作る人に人気があるのは、日本人好みのあの香りのせいではないか。

木村家あんぱん

【さ】砂糖[2017/2/24]

宮崎ミカエル堂のジャリパンを知っているだろうか? 練乳クリームに砂糖がかけられて、食べるとジャリジャリする。昔ながらのご当地パンはたいていそうだが、贅沢な食材を使うのではなく、「あるもので作る」精神。ものが少なかった時代に工夫を重ねた先人の努力がすばらしいと思う。ジャリパンは「魔法」として家でも応用できる。バターと練乳を混ぜて練乳クリームを作ってトーストに塗り、砂糖をぱらぱらとかけるだけ。パンを食べすぎてしまうのでちょっと危険である。松山のプース・ド・シェフで食べた和三盆クリームサンドはおいしくて、『日本全国 このパンがすごい!』(朝日新聞出版)でも紹介した。ミルククリームを和三盆で作っている。独特の風味があって、甘さがやさしい。ゆっくりじわじわやってくる感じなのだ。おそらく精製度が低いので、白い砂糖のように糖がいっきに吸収されないのだろう。ゆっくりきてゆっくり去っていく。「やさしい味」とはこういうことなのだろう。

松山プース・ド・シェフ和三盆クリームサンド

【し】白パン[2017/3/11]

できのいいパンの表現のひとつに「火抜けがいい」がある。正確な定義はわからないが、おそらくは気泡がしっかりできているために内部まで火が通って、食感も味わいもよくなっているということだろう。その基準でいくなら、白パンとは出来損ないなのだろうか。表面が白いまま、焼くのを止めているのだから、「火抜けが悪い」のではないだろうか。製パンのことは私は詳しくないけれど、食べる側からいうとイエスであり、ノーでもある。白パンは好きな人とそうじゃない人にはっきり分かれるだろう。あれは、パンの中の白っぽい味の周波数の部分が好きな人のためのパンなのである。白いということは、皮のキャラメリゼした風味に影響されていない(皮の風味が内部へ浸透していくことがない)。だから純粋な白さを味わえるというわけだ。もちろん、白パンには白パンなりの火抜けがあり、火抜けがいい白パンは本当においしい。白パン嫌いでも好きになってもらえるだろう。

グロワールの白パン「ロシア」

【す】酢[2017/3/25]

一音からできている単語は、昔々の言葉ができた当時からあるような基本的なものだと思う。「ち」(=地、血)とか、「け」(=毛)とか、「き」(=木)とか。たとえば、原始人が鳥を見たときに、「う!」と言って、それが「鵜」を表すようになったとか…そんなふうに言葉は生まれてきたと想像している。「す」(=酢)もそうだ。梅干しみたいな「す」っぱいものを食べたときを思いだしてほしい。口が「す」を発音するときの形になるではないか……。ところで、日本人はすっぱいパンが嫌いだ。ドイツパンがあまり好まれない。すっぱいことは腐っていることを無意識のうちに想像させるからだと思う。でも、すっぱいパンはおかずといっしょに食べると本当においしい。ドイツパンにソーセージをのせて食べてほしい。鯖の味噌煮でもいい。すっぱいパン嫌いは変わると思うのだが。ごはんも同じこと。寿司のときは、酢飯に魚をのせて食べるではないか。ドイツパンはあの感覚なのである。

ドイツパンとソーセージ

【せ】せうゆ(=しょうゆ)[2017/4/09]

以前、パンの世界の第一人者・志賀勝栄シェフ(シニフィアン・シニフィエ)にお誘いいただき、東北地震の被災地の食材を使ったパンのイベントのコーディネーター役を務めたことがある。陸前高田・八木澤商店のしょうゆをご紹介した。香り高く、旨味も豊富で、お刺身ならほんの少しつけただけでも、味わい深く食べられる。志賀シェフはこのしょうゆをどんなふうに使ったか? 生地に混ぜ込むと味わいが薄まってしまう。熱々のバゲットに刷毛で塗って、香ばしさを出していた。せんべいと同じことである。サンフランシスコの世界的名店タルティーンベーカリーのチャド・ロバートソンさんも同じような使い方をしていた。タルティーン名物であるカントリーブレッド(カンパーニュ)をスライスし、しょうゆを塗って、網で焼くというのだ。これは家でも簡単に真似ができる。国産小麦を使ったカンパーニュにしょうゆを塗って炙れば、日本酒にも合う。

シニフィアン・シニフィエ

【そ】ソース[2017/4/23]

日暮里の初音小路にあるセッキーには驚いた。カウンターだけの小料理屋みたいな店でワインバーを営んでいるのだ。ここの名物メニューに「卵4個のタマゴサンド」がある。名前の通り、卵をぽんぽんと4個割ってかきまぜ、オムレツを焼く。その間に食パン2枚をトースターに放り込み、焼き上がるとすかさずバターを塗り、ブルドックのウスターソースを刷く。熱々のトーストに塗るものだから、ソースの香りが舞い上がる。そこにオムレツをはさむ。白ワインのアテとして絶妙である。フランスから三ツ星のシェフが日本にやってきたとき、ブルドックのウスターソースのおいしさに驚き、スーパーで爆買いして帰ったという話をマダムがしてくれた。いかにももっともな話だ。私もブルドックのウスターソースが好きだ。中濃やとんかつソースより、フルーティで酸味があって透明感がある。カツサンドのときも、カツに塗ったソースが食パンに滲みたの、カツがなくてもあれだけで食べれそうだ。

オムレツサンドとカツサンド

【た】田作り[2017/5/1]

単行本『空想サンドウィッチュリー』(ガイドワークス)はル・プチメックの西山逸成さんとの共著。モバイル式の屋台をもって、海岸や小麦畑などいろんな場所(お題)でサンドイッチ屋を開店する企画。「おせち」というお題もあり、このときは日本のおせちをすべてフレンチ流の味付けにアレンジした。田作りは普通は醤油・みりん・砂糖で味付けするところを、しょうゆを使わず、はちみつとバターでキャラメルを作り、それにごまめとくるみも入れてからめていた。普通の田作りよりこっちのほうが私の口にはあった。他のメニューも同様だった。おせちというのはお正月だから食べるだけで、うまいうまいと言って食べるものでもない。考えてみれば、あまりにも食事が西洋化してしまい、和食よりもフレンチの味付けのほうが好きになってしまったんだろう。私にとって決定的な理由はもちろん、そっちのほうがパンに合うからというものだ。

池田浩明プロフィール

池田浩明

パンラボ主宰、ブレッドギーク(パンおたく)。東においしいパン屋あると聞けば行ってパンを食べ、西にすごいパン職人がいると聞けばその声に耳を傾け、南に偉大な小麦農家ありと聞けば土を掘り返し、小麦をなめる。著書に『サッカロマイセスセレビシエ』(ガイドワークス)、『パン欲』(世界文化社)、『おかしなパン 菓子パンをめぐる おかしくてためになる対談集』(誠文堂新光社)、『空想サンドウィッチュリー』(ガイドワークス)、『日本全国 このパンがすごい!』』(朝日新聞出版)、編著に『パンの雑誌』(ガイドワークス)、『食パンをもっとおいしくする99の魔法』(ガイドワークス)などがある。「もっとおいしくて安全な小麦あふれる未来へ」を合い言葉にする「NPO法人新麦コレクション」を立ち上げ、活動中。

About the owner

一楽虎光

店長の一楽虎光です。グロワールは地元・大阪千林大宮のお客様と歩んで半世紀になります。その間、お客様の声に耳を傾け、共に歩み、成長してきました。心のこもった商品作りを常に意識し、おいしいパンを全国にお届けします。グロワールパンブログでは、ベーカリーの日常や、生活のできごとをつづっています。こちらもぜひご覧下さい。

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